
人々の輪を離れ、木陰に身を潜めた家康とほたる。
月の美しさゆえか、家康の口から、心の中に留めていたほたるへの想いが次々こぼれ出る。
そして──。
家康「……………」
家康の真摯な表情に、視線をとらわれた。かと思うと、唇に優しい温もりが下りる。
ほたる「ん…」
しばらく互いの熱をわけあった後、家康が名残惜しげに身を引いた。
家康「──申し訳ありません。驚きましたか?」
衝動的に口づけたからだろう。家康の瞳には気遣わしげな色が浮かんでいる。
ほたる「も、もちろんです。このようなところで…」
家康「…この方法が一番だと思って。互いの淋しさを埋めるにも、僕の想いを伝えるのにも。…嫌でしたか?」
ほたる「いえ、それは…。ただ、恥ずかしいだけです」
恥じらうほたるに、家康は愛おしげな眼差しを向ける。
その瞳に、出会った頃のかげりや怯えはない。
家康「では、今すこし我慢してください。この幸せなひとときを、まだ感じていたいですから」